病院情報システムとは、病院の各部門を結び、病院の業務を支援するシステム全体をさします。英語表記では一般的にHospital Information SystemHIS)と呼ばれており、この中には、いわゆる電子カルテシステムをはじめ、オーダエントリシステム、医用画像情報管理システム(PACSPicture Archiving and Communication System)、医事会計システム、病理部門システムなど各部門に特化したシステムすべてが含まれます。医療情報部では、基幹システムや個々の部門システムの導入・調整に関わることはもちろん、病院全体としてこれらの数多くのシステムを連携させ、綿密に調整する全体最適の視点が重要となります。

さて、病院情報システム発展の歴史を紐解くと、1990年代までは紙の依頼を電子化し各部門に伝搬するオーダエントリシステムが開発され普及することとなり、実績情報とともに医事会計業務の電子化が進んだことから、この応用として各部門システムが発達することとなります(情報の伝達)。2000年代になると医用画像の電子化、医師の記事記載や診療の経過記録などが電子化され、このころからフィルムレス、ペーパーレス環境が視野に入ってくることとなります(情報の記録)。2010年前後には完全フィルムレス、ペーパーレス環境の構築が予算の範囲内で比較的容易に可能となり、世の中のビッグデータ活用を可能とした人口知能等(AIArtificial Intelligence)の能力の飛躍的な向上と相まって、現在は情報の利活用の時代に突入しています(情報の利活用)。

前述の通り、病院内の全システム(病院情報システム)を構成する基幹システム(いわゆる狭義の電子カルテシステム)と数多くの部門システムには、それぞれ重要なデータが分散して保管されており、臨床家はそれらのデータを手作業で収集し、一患者の経過を把握することに努めているのが実情である。医療情報部ではこれらの分散管理される情報を如何にシステマティックに集約し、診療現場のニーズや研究活動、国策などに対応できる情報を効率よく如何に提供できるかを検討し、実装していく活動を行っている。これまでは紙に記載された情報を如何に電子化するかということに注力されていたシステム群であるので、蓄積された情報を利活用すること、あるいは蓄積したい情報を如何に入力させるか、効率よく収集するかという観点でのシステム開発はまだまだ十分ではない。また、入力する情報も入力者によって統一されていないことが多く、入力情報の統一化、用語の統一なども重要なテーマとなっている。医療情報部では、診療や医療安全、研究活動、国策など各種のニーズに合わせた課題の抽出、それを解決するためのデータ収集方法・システム開発の検討、それを現場に如何に実装していくか、という視点から日々研鑽と積んでいるところです。

様々な目的に対応できるインフラ基盤、体制、プラットフォーム等を構築していくための全体最適の観点を持った人材を育てていくことも我々のミッションと考えています。高い志をもって医療に貢献すべく、ともに活動する仲間をお待ちしております。