医療情報部および医療情報学分野としては、2つの観点から人材教育していく必要があると考えています。

一つ目は、病院情報システムの更新を全体最適の観点から着実に進めることの出来る人材の育成です。現在の病院情報システムは、基幹である電子カルテシステムと数多くの部門システムの集合体となっており、その基幹と部門を合わせるとそのシステム数は数十を数えることも珍しくありません。

さらに、近年の医療の高度化に伴いシステムに要求される要件も高度化かつ専門領域化してきています。これらの各部門のシステムに対する高度なニーズを適切に捉え、かつ予算範囲内で実現できることを取捨選択しながら最適化していくには、それぞれの分野での最低限の知識が必要であり、システムを開発する企業との調整能力も求められます。

さらに、診療の質向上、医療安全、病院経営、研究支援などに資するシステムをステークホルダーのニーズを適切に満たしつつ、構築していくための知識、経験、コミュニケーション能力が必要です。このような多種多様な能力を有する人材を、実践教育を通じて育成していきたいと考えております。

二つ目は、診療現場で発生するデータをいかに効率よく利活用できるかを考え、実現することの出来る人材の育成です。上記の様な病院情報システムの構造上、重要なデータがそれぞれのシステムに分散管理され、横断的なデータの検索や収集がシステマティックに出来ず、用手的に各診療科が目的ごとにデータを収集しているのが現状です。

診療データ(リアルワールドデータ)の利活用や各種疾患レジストリの効率的な実現においては、データの発生源である診療現場のシステム構築時に、その設計時点からいかにデータを効率よく収集して活用できるシステムとするか、綿密に構想を練る必要があります。これを実現できる人材育成が必要です。

診療データの電子化には目処が立っている現状ではありますが、データの利活用を考えたとき、まだまだシステムに求められる要件は多く、これらを実現していくための人材育成、教育研修に注力していく必要があると考えています。